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2011年2月15日 (火)

映画「海炭叙景」を観た

故佐藤泰志の1980年代後半の作で、18のオムニバスからなる同名小説のうちの、5つ?の作品を映画化したものである。何度か芥川賞候補になった佐藤は、「海炭市叙景」では合計36の短編を書くつもりだったようであるが、1990年に自死してしまったので、後半部分は未完に終わっている。架空の「海炭市」であるが、モデルは函館市である。佐藤と監督の熊切和嘉は函館出身である。

その5つの作品とは、「まだ若い廃墟」「避けた爪」「猫を抱いたばあさん」「裸足」「黒い森」である。

「まだ若い廃墟」:母は家出し炭鉱夫の父を亡くし、自分たちも造船所のリストラで失業中の仲の良い兄妹の話である。大晦日に、部屋中で掻き集めた僅かな小銭を持って初日の出を拝みに山に登る。帰りは妹だけがロープウェイに乗るが、兄は歩いて下山した。兄は帰ってこずに遺体で発見される。兄は自殺とも思われる節もある・・・

「避けた爪」:小学生の子連れで同級生の女性と結婚した零細プロパンガス会社若社長の話。若社長は、事業を拡張したいので色々手を出すがうまくいかない。会社オーナーの父親からは、プロパン以外の事業はやるな、と叱責される。若社長は子どもを溺愛していて、後入りの妻は若社長とはうまくいかず、夫が浮気していると非難し、結果子どもを苛め抜く。ある日、若社長は配達中にプロパンボンベを足の親指に落とす。指がつぶれる痛さに耐えながらも、子どものことは考える。妻とは離婚したいと思う・・・・

「猫を抱いたばあさん」:70歳の独り身女性。かつて、自分の親も開拓した村にずっと住んできた。ところが、周辺は一気に市街化し幹線道路ができ、さらに進んで自宅も再開発事業の地区内になった。市からは立ち退きを迫られている。周辺は更地になり、重機も入ってきている状態にある。周辺は皆立ち退いたが、女性は山羊、豚、鶏などを飼って貧乏であるが自活している。大事にしている猫を膝に抱いて、つぶやく「これからさき、明日も明後日もずっとこの家に住み続ける・・・・・」。女性の落ち着きには、逞しささえ感じられる

「黒い森」:プライドを持ってプラネタリウム館に勤め、器械を操作する50がらみの市職員の男の話。妻は水商売しており、しかも客との浮気が絶えない。夫はその仕事を辞めさせたいと思うが、市の職員の収入だけでは生活できない。高校生の息子がいるが、子どもの頃の家庭は親子三人で森に行ってクワガタを採ったりして仲良かった。その森もどんどん市街地に変貌を遂げる。その高校生の子も、友達との付き合いを優先し、親から離れ自分の世界に入り込む。帰宅したら、「自分の部屋にこもる毎日である。父親も取り付く島がない・・・

以上であるが、今の日本の地方都市にはどこにもある、再開発、企業倒産、零細企業の悲鳴、貧困化、教育問題、家庭の崩壊、といった地域と社会の問題を鋭く指摘している。ところが、佐藤が書いたのは1980年代のバブルの頃であり、20年以上後の社会問題を想像できる感性は凄い。全体のトーンは重苦しく、北国の冬が場面であるだけに、決して明るいものではない。

しかし一方では、生きていくことの厳しさに寄り添いながら、作者の何かしら暖か思いも映画から伝わり、安堵を感じる部分もある。また、映画のエンディングでは幾人かの登場人物が一番電車に乗り合わせている。「海炭市」というしがらみのある生活地域で、シリアスな問題を抱えながらも絶望せず、明日も明後日も明々後日も・・・同じように、もがきながらも精一杯生きていくことしかできない様を表現している。(110214)

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○熊切和嘉[監督]『海炭市叙景』(2010年)を観てきた。 先週末に熊切和嘉[監 [続きを読む]

受信: 2011年2月28日 (月) 02時32分

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